隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「もう、夜が明けるよ」

 ここは地下。夜明けが来たって、太陽なんか見えない。

「蓮のとこ、行っといで」

 優しいタケさんの声。もう、日の出の時間帯なんだ。外はきっと、ぐっと冷えているだろう。東北の冬を甘く見てはいけない。

「あと、今日のケンカも蓮には内緒な。男と男の約束だぜ」

 いや、あたし女なんですけど。
 とりあえず、店の雰囲気とタケさんの気持ちに応えるため、親指を立ててみた。
タケさんは吹き出したけど。

「じゃあ。あと連絡します」

 電話をかける仕草をして、コートを着た。

「おう、気を付けて」

 タケさんは手をひらひらと振る。ちょっと寂しそうな笑顔だったけど。

 あたしは、重い鉄の店のドアを開け、冷えた空気の中へ出た。


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