隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~

「……あんたたち2人、幸せになればいいと、思ってる」

 あたしを抱きしめたまま、タケさんは言う。優しく、ゆっくりと。呼吸が伝わる。

「そんな、蓮が何考えてるか分かんないとか、言わないでやってよ……」

「タケさん……」

 あたしは蓮への不信を止められなかった。さっきは、タケさんが怒りを抑えられなかった。そして、タケさんは、たぶん蓮を。そうなんだね、きっと。

「あ、あたしこそ。ごめんなさい」

 タケさんの背中に手を回した。大きな背中で、背も高いし、回すのひ一苦労。

「あと、しーちゃんは蓮のことには鈍感だけど、まわりには敏感だから」

 ちょっとタケさんは息を飲んだみたいだった。

「気付いただろ……蓮には、黙っててくれるか。俺、うっかりしたよ」

 何のことを言ってるのか、あたしは分かってる。返事のつもりで、タケさんの背中をトントンと撫でる。

「大丈夫。絶対言わない、信じてタケさん。あと、ごめんなさい」

 安心したのか、タケさんはやっと離してくれた。

「それ、蓮が目覚めたら言ってやれよ」

「うん……」

 どんな気持ちで、あたしのそばに居たのか。そうだね。タケさんの言うとおりだよ。あたしは蓮の何を見ていたのか。

「ごめんな、ビックリしただろ」

「ビックリっていうか、痛かったし怖かったよ!」

 ごめんごめんと言いながら、タケさんは床に落ちていたあたしのコートを拾い、こちらへ放った。