隻眼金魚~きみがくれた祈りのキス~


「……ぁ」

 ……? ふと力が緩んで、首が楽になった。楽になったというか、初めからあんまり締まってなかったような。びっくりしただけかも。そう思って見た、タケさんは……泣いてる……の? 
 店内の薄暗さの中、瞳が濡れているのが見える。

「俺は……あいつを……」

 ……タケさん?

「……」

 濡れた目が逸らされた。まさか。まさかタケさん、もしかして……。
 あたしを掴んでいた手が緩む。床に足が着いた。タケさんは少し息が荒い。あたしの息も荒い。緩んだタケさんの手は、しかしまだ服を掴んだまま。

「……わ、悪かったよ、ごめん。カッとなっちまった。ごめん」

 あたしは、まだ震えている。少し咳き込んでしまった。

「!!」

 タケさんはあたしを乱暴に抱き寄せた。今度はなんなの!

「タケさんっ」

「ごめんね、しーちゃん、ちょっと俺、怒りを抑えられなくなっちゃって」

 もう、身動きが取れない。がっちりと抱きすくめられている。体を、というより頭からすっぽり。もう、なんなのよ。

「怖がらないで。ごめんね、もう何もしないよ。俺、しーちゃんも好きなんだ。大好き」

 さっき、一瞬の涙を見た時に、少し恐怖は薄れたけど、タケさんは体が大きいので、やっぱり怖いもんは怖い。