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うす暗い個室の中で、ヘッドホンを耳にあてる男。

ヘッドホンから聞こえてきたのは、ひと組の男女の声。


「いてっ……!」

「どうしたの?」

「大丈夫だ。ちょっと頭痛がしただけで……」

「治ったの? 痛くない?」

「あぁ……」

「我慢してない? 平気?」

「たまーにあんだよ、こんなこと。大方、睡眠不足とかだろ」

「じゃあ、少しでも寝てよ! 体休めなきゃ!!」

「大丈夫だって」



神崎杏樹の部屋に取り付けた、盗聴器から聞こえてくるモノ。

杏樹と、その彼氏、滝本陸との会話の内容だった。



陸が頭痛を訴えている様子。

男は、ニヤリと口角を上げた。


「それでいい。計画は順調だ」


喜びで、男は右手を握りしめる。





ところが。



ふたりの会話はこれだけで終わることはなかった。



「あのさ……疲れてんのは確かだし、睡眠が足りないのも事実。でも、ただ寝るより、疲れを取る方法……あるんだけど」

「んっ……!」

「1週間、ずっと会えなかったわけだし。俺に待ってたご褒美くれてもいいんじゃね?」

「じゃあさ、あたしにもご褒美ちょうだい? がんばって、早く京都から帰って来たんだから……」


――トサッ……


「じゃあ、今夜はいっぱいかわいがってください」

「もちろん、喜んで」