「いやーなんか、照れるね」


ひと通り落ち着いたあと、顔を手で仰いだのはみくるちゃんだった。


「京なんて少しも照れずに言い切ったのがすごいわ……」

「俺なんか変なこと言ったかや」

「あーこれこれ。これだよ、万代」

「なんかや! 俺ふつうのことしか言っちょらんじゃろ!?」

「うん、万代にはあのくらい言わないと伝わらないかもだけど……他の女子には言わないほうがいいと思っ」

「俺が風呂に入ってるあいだに、ズガズガと上がり込んでる男がいるようだが?」

「………」


半分開けっぱなしだったドアから部屋を覗き込む瞬、怖い……。本当に怖い。足音、全く聞こえなかった。


「今だ万代。言っちゃれ」

「えっ!? えっと……瞬、あの、みくるちゃんと今度遊ぶ約束した! それから水島くんと……友達になった!」

「俺“水島くん”から次の言葉が聞こえねえから」

「……、友達になった、水島くん」


紹介するように指先をそろえて水島くんに手を向けてみれば、瞬は盛大に舌打ちをする。


「知恵つけやがって……。みくるっ、帰んぞ!」

「え。べつに送ってくれなくて……うん、聞く気ないね」


呆れながらも笑みをもらしたみくるちゃんは、それをわたしにも向けてくる。


「長々と居座ってごめんね。風邪治ったら、遊び行く計画立てようねっ」

「うん。今日はいろいろ、ありがとう」


笑い合ったあと、みくるちゃんは瞬のもとへ駆け寄る。


「水島くんも、ありがとう」


部屋を出てすぐ声をかけると水島くんは立ち止まった。