1度だけ、体育座りでうずくまる瞬の頭を撫で続けた記憶がある。
あれは、何歳のときだったかな。
目を覚ましたわたしの気を引く、“わたし”。
壁際を向いてベッドに横になっていると必ず目に入るそれは、瞬が幼いころに描いた、わたしの似顔絵。
福笑いでもないのに、顔のパーツはだいぶ面白いことになっている。
そろりと起き上がり確認した部屋には誰もいなかった。
「え……あれ?」
いつベッドに入ったっけ。照明すら点けた覚えはない。
記憶を探るように額に手を当てると、熱が下がっていた。
――あ。そうだ。座ってるのもつらくなって……。
『おい、なんだ、どうした万代! 吐くのか!?』
『え!? なに、万代、気持ち悪いの!?』
『そろそろ寝かせちゃれよって、いつ言おうか悩んどった』
『悩む前に言えよバカ京! ……って、あっつ! は!? 万代お前、熱上がってね!?』
瞬たち慌ててたなぁ……。
まだ少し気だるいくらいで、体にこもっていたような熱や喉の痛みはほとんど感じられない。
汗もいっぱい掻いたかな。着替えよう。
ベッドから足を出したとき、ドアがノックされた。
「――あっ! 起きたね! ベストタイミングーッ」
「……み、みくるちゃ……」
「おはよーって、もう20時過ぎなんだけどね。具合どう? 鍋焼きうどん持ってきたんだけど、食べられそう?」
「え……え、うん。平気」
なんだろうこのデジャビュ感。