「いい加減にしなよ! 万代は瞬を出し抜こうと思って来たわけじゃなくて、勉強をしに来たんだからっ」

「みくる、どの口がそんなこと言っ」


「じゃま!」と瞬を押しのけたみくるちゃんが神々しい。


「ごめんねー、万代。事前に言っても怒るなら、言わないでみようと思ってさ。まさかこんなアホみたいに怒るとは思ってなかったけど」

「おいアホってなんだ。俺はなあっ」

「はーい! はいはい。わかったから。不満ならあとで聞くから、少しは周りのこと考えてくれる?」


低くなったみくるちゃんの声に瞬は押し黙る。


ちらっとわたしを見遣った瞬の眉間にはしわが寄っているものの、不満を口にする気配はなかった。


……やっぱり瞬はわたしがいると、笑わない。



「万代行こっ! みんなに紹介しないとっ」


みくるちゃんはわたしの腕をとって笑顔を見せる。


「今日は万代と京がいるから4人ずつに分かれるの。万代はあたしと座ろうね!」

「う、うん。ありがとう」

「みんなー、万代連れて来たっ」



ガチガチに固まるわたしは、目の前の男女4人と挨拶程度の言葉しか交わすことができなかった。


あとはみくるちゃんが会話の橋渡しをしてくれたけれど、やっぱり緊張からうまく頭に入らなくて、「よろしくねー」と言ってくれた人たちの笑顔が、歪んで見えた。