「……こんにちは、の時間ですよ」

「あれ? この前は、」

「京! その手を離せって言ってんだろ!」


しゃべることは諦めたようだが、水島くんはわたしから目を離さない。


「万代を見んな! 目が腐るぞ! 俺を見ろ! つーか手を離せ!」

「怒鳴るのやめてくれたら離すけん」


瞬は大口を開けてすぐに閉じた。すると水島くんの手は離れ、次いで瞬がその背にわたしを隠す。


「京……てめえ、万代が今日来ること知ってやがったな」

「そりゃあ、みくるから一斉送信でメール来ちょったし」

「俺には来てねえぞ!」

「瞬には内緒でって書いてあったけん、どうしようもなか」

「転送しろよ! 転っ送! どんだけちっせえことでも万代に関係することは逐一俺に報告しろ!」


よろりと1歩身を引いたわたしは、瞬自身に引いていた。


ち、逐一って……。

瞬、いくらなんでもそれはちょっと受け入れ難い。


もしかして水島くんと初めてしゃべったことがその日の内にバレたのも、水島くんが何気なく話題を添えたんじゃなくて、瞬が逐一報告しろって言ってたからなの?


「怒る相手間違っちょると思わん?」


ひょい、と顔を覗かせた水島くんは「見んな!」とうるさい瞬のせいで再び見えなくなってしまった。すると、みくるちゃんが瞬を呼んだ。