空に、森に、田んぼに、川。ぽつぽつと民家があって、マンションやアパートは見当たらない。


数えられる程度の車がまだライトをつけて走っている。


ぼんやりしてしまいそうになるほど、とても静か。


……今まさにニワトリが鳴いて瞬が吹き出したけど。


水島くんが育った町は、時間の流れがゆったりしているように感じた。


「約3年ぶり、かあ……」


声を聞けたのは今月の頭。それまでいっさい連絡は取っていなかった。


「お前また号泣とかやめろよ?」

「あのときは本当にびっくりしたの! もう泣かないよっ」

「たぶんって付けといたほうがいいんじゃないの」

「叶に1票。そろそろ行くぞ」


……ずっとこのふたりに挟まれていたから、水島くんに優しくされただけで泣けそうな気がしてきた。


再び車に乗り込み、ゆるやかな高台から平地へ出る。


さきほどよりも町並みがよく見え、どきどきしてきた。


徐行する瞬がハンドルにもたれ、家屋を見かけるたび覗き込んでは「ちげえな」と呟くから、余計に。


まずい、心臓がすごいバクバクいってる……!


「しゅ、瞬、ちょっと待って心の準備をっ」

「はあ? んなもん昨晩のうちにしとけ」

「だって水島くんも18になってるってことでしょ!? 春から大学生ってことでしょ!? 想像できない!」

「今から会うやつ想像する必要ねえだろーが!」

「会うから想像するんじゃないの!?」

「うるっせえな! すぐ会わせてやっから黙って――…」


突然ブレーキを強く踏み込まれ、瞬の肩に頭をぶつける。


「でかっ!! はっ!? あいつ金持ちかよ!」

「田舎だから土地が安いんじゃないの」

「それにしてもでけえだろ!」