「ひっ!」

「黙って歩け」


瞬は首に腕を回してきたかと思えば、無理やりわたしを歩かせる。というより重い荷物のように引きずられた。



「どういうことなのか30秒以内で答えろ」


ファミレスの角を曲がった途端、瞬はわたしと向き合う。


すっごく怒っておられますね……。


「み、みくるちゃんから聞いてるかと思っ」

「聞いてねえよ! お前見つけて思わず目ぇこすったわ!」

「わ、わたしだってまさか、なにも知らない瞬と対面するなんて思ってなかったもんっ」

「くっそ……。みくるの奴、言っても聞かねえと思って黙ってやがったな」


みくるちゃんのいるほうを盗み見た瞬は、再び険しい顔を向けてくる。


「お前もお前だよ! なにのこのこ来てんだこのバカ! メールだったらドタキャンくらいできただろうが!」


あ、悪魔だ……。わたしの人格なんて瞬の前では尊重されるどころか無視されるんだ……。


ひどすぎる。いくらなんでもそんな扱いをされて、黙ってるわけにはいかない。


「わたしだって最初は断ったけど、ご存じの通りB判定で、落ち込んで……そしたらみくるちゃんが誘ってくれて」

「わかった。もう二度とみくるの前で落ち込むな」

「……言ってる意味が、ちょっと」

「落ち込んでも元気なふりをしろって言ってんだよ」

「……」

「次からB判定だろうがA判定だってことにして、アホみたいに浮かれとけ。そしたらもう誘われねえだろ」