「……っ、」


声にならない嗚咽をもらした水島くんが負けないくらい手を振ると、ふたりは腕を下げた。


「あー……ほんと、予想外のことばっかしよる」


しばらくふたりを見つめていた水島くんは助手席に引っ込み、目元を手で覆った。


「せっかくこらえちょったんに、最後の最後で……っ全員、そろうとか……」


反則だとつぶやいた彼は、静かに泣いていた。


……笑い合えることが幸せだと思った。これ以上伝えたいことはないと思った。だけど水島くんの涙を見たら、泣いてでも伝えたい想いが溢れた。


「~っ頑張ってね!!」


伝えなきゃ。嘘偽りない気持ちを。

水島くんがどこにいても、笑っていられるように。


「離れても、応援してるから……っ頑張ってね、元気でいてね!」

「……万代」

「またね……っ水島くん」


あとからあとから涙がこぼれ落ちる。


「いつか、また……っ絶対遊ぼう、ねっ……」


頬を濡らすときでさえきれいな水島くんとちがって、わたしの顔、きっと涙でぐちゃぐちゃだ。


「……泣きすぎじゃろ」


そう言う水島くんの目もまだ潤んでいた。


笑うよ、最後は。

だけど水島くんが「ほら」ってわたしを招き寄せ、頬を包んで涙を拭うから、ぼろっと大粒の涙がこぼれた。


「大好きだよ……っ」

「――……、」

「瞬も、ハカセも、みくるちゃんも、わたしもっ、水島くんのこと、ずっと大好きだよっ!」


いっそう潤んだ瞳から一筋の涙を流した水島くんは、これでもかってくらい、口角を上げた。


「俺も、大好き」


人懐っこく、とろけそうなほど細められた黒目がちの瞳。この上なく愛嬌深い、宝石のように美しいそれは、わたしが好きな水島くんの笑顔のひとつだった。