「ねえ、抜け出して大丈夫なの……!?」
「びびるくらいなら来んじゃねえよ」
「僕、見つかったときの言いわけなら考えたよ」
「えっ。わたしにも教えてください」
「万代はすぐどもるけん、黙っちょったほうがよか」
ひどい! その通りだけど!
就寝時間が過ぎた夜0時過ぎ。常磐寮を抜け出した5人の影が、月明かりの下をこそこそと歩く。
言い出しっぺはもちろん水島くんで、即便乗したのが瞬。そのまま芋づる式にわたしたちも参加することになった。
木々に囲まれた常磐寮からずいぶん離れたところまで来ると、視界一面、野原だった。
きっと昼間であれば、家族連れがピクニックをしたり、フリスビーを追いかける犬がいるんだろう。
みんなで足を止め、引き寄せられるように夜空を仰ぐ。
「うっ……わあ! 満天! 東京とちがうっ」
「降るような星って、こういうことだね」
どこまでも拡がる夜色の空に、幾千もの星がちらちらと光をまといながら唄う。
暗闇なのに、鮮やか。そんな景色を実際に見たことはなくて、思わず伸ばしかけた手がぴくりと動いた。
「……すごい」
きれい、なんて言葉でいいのかな。
風脚の弱いそれに踊る草木の音さえ幻想的な、透徹した夏の夜空だった。
「やっぱ生はちがうなー」
同じように空を仰いでいた水島くんはわたしの視線に気付き、嬉しそうな顔をする。
「来てよかった!」
笑い返すのを少しためらってしまったのは、ひと際強く、終わりを感じたせい。
「……うん、わたしもだよ」



