「あの、ね……」
しゃべろうとするたび、止まりかけた涙が浮かぶ。
「わたし……ね、」
口にしようとすると余計に泣けてきてしまって、息を吸って吐いてを数回繰り返した。
「水島くんが……好き、なの」
きっと自覚するよりずっと前から。
過去、瞬と指切りしたことを後悔するほど。
「好きな、だけなのに……っつらくて」
つらいのに嫌うことも忘れることもできるわけがなくて。
水島くんに嫌われることも忘れられることも、怖くて。
どうすればいいのかわかんないなんて、いつものことで。
「わたし、なにがしたいんだろう……って、考えるんだけど……はな、離れたくないって、それ、ばっかりで」
現実として、もう離れることは決まってるって理解はしている。それでも、どうしても。
まだ、まだもっと、一緒にいたいって願ってしまう。
「水島くん、戻るの……わたしたちに黙って、夏休みが明けたら……っ向こうの、高校に、通うんだって……」
お兄さんから聞かされたと告げる。
黙っていたみくるちゃんは、息を呑んだ。
びっくりするよね。どうして、って。わたし、何度も思った。いっぱい考えた。そうしていつも、引き止められるわけがないって、また泣くんだ。
「あたしは、つらいだけの恋ってないと思うよ」
訊きたいことをいくつも呑み込んだように、たっぷりの沈黙のあとに告げられたみくるちゃんの言葉だった。



