「……前に島崎が、バイト帰りに俺のこと見掛けるって言っちょったけど、それはアイツも同じだけん。俺だけじゃなくて、保護者とか、補導員とかにも」

「島崎くん、制服だったの?」

「今回はたまたまなぁ……知っちょる? 島崎の髪って昼間見ると明るいんじゃけど、夜だとほぼ黒にしか見えん」


自分の黒髪を指差した水島くんは、口角を上げている。


夜に島崎くんを見掛けたことはないけど、ふたりの背丈も適度に着崩された制服のそれも、ほとんど一緒。


端正な顔という点でも、互いに負けず劣らずだ。


「とりあえず外見に当てはまるからって、俺と島崎が呼ばれたけん。先生らは保護者から連絡があったって言っちょーけど、前々から苦情はあったんじゃろな」


自由な校風はいいけど、伝統ある有名進学校も考えものだ。


そんな風に水島くんは笑って言うから、停学なんて痛くも痒くもないらしい。


島崎くんはバイトをかけもちしているから。夜中に出歩いていたのは自分も同じだから。隠れてバイトしている他の生徒もいる中、島崎くんだけが処分されてバイトを辞めることになるのは、なんか違うと思ったから。


水島くんは『自分です』と、嘘をついた。


「バイト先とか突っ込まれたらどうしようかと思ったんじゃけど、全く。『そうか』って島崎だけ先に帰してもらえて、あとはまあ生活態度もろもろで停学決定しちょーよ」