どういう経緯で水島くんと島崎くんが呼び出され、一方が停学になったのかはわからないけど……。


仮に島崎くんが受けるはずの停学を、水島くんに押しつけたわけじゃないと聞けただけで充分だった。


今は1時間目の休み時間。ついさっき掲示板に処分通知が張り出されたってことは、本人に通告されたのも今日のはず。男女別の体育に水島くんは出席せず、事実確認と停学の決定がなされたのなら――…。


勢い任せに開けた水島くんの下駄箱には、スニーカーが、入っていた。


最近の水島くんからして、雨の日は屋上にいる可能性が限りなく低い。そう思って下駄箱まで来たのに……。


乱れる呼吸を押し退け、大きく息を吸ったわたしはもう一度べつの場所を目指して駆け出した。


泳ぐのは得意でも、走るのは得意じゃない。階段の踊り場で方向転換するたび、キュッと上靴が鳴る。


重い。脚がしなやかに、力強く動いてくれない。


ああ、もう、遅い……!


一段駆け上がるたび、重力に負けそうになる。


息苦しくて立ち止まってしまいそうになるたび、こぽこぽと口から洩れる小さな気泡の幻を見る。


水が欲しい。たくさん、溺れてしまいそうなくらい。


水中だったらもっと、もっと速く、水島くんがいる場所へ泳いで行けるのに。