なんだか胸の奥がむずがゆくなる。
水島くんにも、秘密ってあったんだなあ。
「いつか見つかって怒られても、知りませんからね」
「心配いらんが。2年以上、1回も見つかっちょらんのがいい証拠」
「……、え? 1年生のときから出入りしてたんですか? 屋上って開放期間が決まってるのに、どうやって――」
目の前に出された物に絶句する。
「スペアキー作った」
そこまでする魅力が屋上にあるとでも言いたげ。
「……水島くんが思ってた以上に素行不良だってことは、よくわかりました」
「おあいこじゃろー? 万代が鍵をじってきちょーなんて、誰も思い付かん」
にんまりと口の両端を上げた水島くんが、初めていたずらっ子のように見えた。
「わた、わたしはっ、水島くんに頼まれたから、仕方なく……!」
「ふーん? なら夏休み中、塾サボっちょーことはどう言い訳する気かや」
「え!? そ、それは……っその、体調が……あれで」
「万代って言い訳、下手くそ」
その通りだと自分でも思いますけど……。鍵を拝借したことと、塾をサボったことは今、関係ないじゃない。
敗北にも似た悔しさと羞恥を感じてうなだれていると、やがて沈黙が流れていることに気付く。
顔を上げれば空を眺める水島くんがいた。



