階段を上りきると、水島くんがあぐらを掻いて笑みを浮かべていた。
「昼休みぶり! ありがとなー、万代」
わたしがりっちゃんと渡り廊下にいたこと、知ってたんだ。
まあ、他の人たちも気付いていたもんね……。
「いいです、けど。どうしてすぐ出てきてくれなかったんですか」
「もしかしたらしくじって、先生と一緒かもーって」
ひどい。最大の勇気を振り絞って鍵を拝借してきたのに。
「冗談。見回りかもって警戒したけん」
「いいですよ……職員室前でうろうろしてたら先生にすっごい怪しまれて、1回逃げましたもん」
水島くんから少し離れた場所に腰をおろし、呟く。
「でも尾行されてないのは確認済みです」
「ん?」
「ちゃんと背後を振り返りながら来ました」
目を丸くさせていた水島くんが唐突に声を出して笑う。
「はははっ! それ逆に怪し……っ万代ってほんと、思ってた通りの子だけん」
水島くんの言葉を理解したのは、喉仏を上下させていた笑い声がやんで、微笑まれたときだった。
「ありがとう。気ぃ遣ってくれたんじゃろ?」
「……、」
「俺が屋上に出入りしよること知っちょるん、万代ひとり。だけん助かった」
なるほど。だから瞬や他の友達でもなく、一度しか話したことのないわたしに連絡をよこしたんですね。



