水島くん、好きな人はいますか。





2月も二十日以上過ぎたころ、教室に置かれていた個人の荷物が徐々に減ってきたのがわかる。


今日は午前授業だったこともあり、普段の昼間と比べ生徒の数もまばらだ。


「――万代」


日誌に落としていた視線を上げ、見向く。3階の踊り場に瞬がいた。隣にいる子へ声をかけるべきか迷い、ひとまず階段を下りてくる瞬を待った。


……なんか、背が伸びたんじゃない?


「今帰り? まだ残ってたんだね」

「お前と一緒」

「瞬も日直だったの? ……日誌は?」

「こいつが帰りのホームルームに出した」

「瞬ってばちっとも仕事してくれないんだから」


瞬に顎で差された子はふくれっ面になりながらも、ゆるく巻かれた髪の毛先を撫でつけ、かわいらしい声で怒る。


そっか。日直だったからこの子――みくるちゃんのライバルで、りっちゃんいわく“肉食ちゃん”――とふたりでいるのか……。


肉食ちゃんと呼ぶのは気が引けるので、わたしは巻き子ちゃんと呼んでいる。


「A組の日直ってふたりひと組なんだ。何順なの?」


止めていた足を動かし、2階にある職員室へ向かう。うしろからついてきた瞬が「席順」と答え、階段を踏み外すかと思った。


仲良しグループの上に、隣の席? 強運の人って本当にいるんだ。


たん、たん、と階段を下りていれば、


「お前、背ぇ縮んだ?」


と、瞬が言ってくる。