「……涙が出るほどおかしかったですか」

「ここ最近でいちばんおもしろかった」


シュッ――と水島くんに消毒液を吹きかける。


顔にもかかったのか「うぷっ」なんて声を出された。


「万代って地味に反撃しよるけんね」

「どうせ反撃も地味です」

「なんでそうなるが!」


下手くそな照れ隠しだもん。
文字に変換できない感情が胸に渦巻くと、いつも勝手に手が動く。


「消毒しますから」


噴射口を見せれば水島くんは髪を耳にかけ、ピアスを少しゆるめると、横を向いてくれた。


ふたつ目のピアスは、スカイブルーのスワロフスキーがぽつんと、取り残されたようにあしらわれている。


装飾が施された重厚感のあるシルバーピアスと並んでいるせいか、輝きは鈍く、粗笨さが目立つ。


水島くんっぽくないシルバーピアスも見慣れちゃえば、似合うんだな。


消毒液に交じって流れてきた血をティッシュで拭い、最後にピアスホールも消毒できるよう、ポストにも消毒液を吹きかけた。


「はい。しみなかった?」

「ん。大丈夫」


新しいティッシュを受け取った水島くんはしっかりとピアスを留め、耳や指を拭う。


「……まさかここで開けたの?」

「そう、衝動的に」


なんでまたこんな時期に、こんなところで。


「高校生になる前にふたつになっちゃって……」

「さすがに怒られるかやー。逃げるからよかけど」


逃げるんだ。