瞬たちがいつも行動を共にするようになったのも、水島くんをよく笑う人だと思ったのも、夏休みが明けてからだ。


違うクラスだったわたしからすれば本当に、“気付けばそうなっていた”って感じだったけれど。


「そうだったんだ。……想像つかない」


初めて話したときは、最初から今のままの水島くんだったもんなあ。無理して標準語でしゃべっていたころの水島くんは、なにを思ってそうしていたんだろう。


当時は『遊びに誘ってもウンと言わねえ』って瞬が不満をもらしていた気がする。でもそれは今もたまにあるし……。


「あんたたち、おしゃべりもいいけど遅刻するよ」


聞き役に徹していたお母さんの言葉に時計を見る。


わたしはそろそろ仕度をする時間。瞬からすればあと20分は余裕がある。


「その水島くんって子のことはほっとけば? プラスだろうとマイナスだろうと、人間、毎日なにかしらの感情に左右されるほうが多いでしょ」


席を立ったお母さんに同調する気持ちはあったのに、ちくりと胸が痛んだ。


放っておいて、いいのかな。


「まあ、元気ねえなら笑わなくてよくねえ?って思うけど、あいつの勝手だしな」

「……そうだね。選抜前の試験期間中だもん、さすがの水島くんでも疲れるよね」


そう返したわたしの脳裏に浮かんでいたのは、金色の髪をした女の子だった。