「でもさあ、ほんと今さら?って感じだよね。瞬と京は1年の中盤くらいから仲良くなって、あたしと万代だって2年から友達なのに。今まで京と万代がしゃべったことないってほうが、あたし的には不自然だったよ」
「う、うーん……。でも、とくに話す用もなかったし」
「そうだとしても、瞬があんなに嫌がる理由がわかんない。京って、言うほどタラシじゃないと思うんだけど」
「……言うほど?」
「ほら、期待する子は大勢いるけど、京には全くその気はないって有名でしょ?」
内緒話をするようにこっそり話したみくるちゃんは「無駄に優しいからね」と付け足した。
「あ。そうだ万代。今度みんなで一緒に勉強しない?」
予想していなかった誘いに肩が張る。
「ね! 選抜受ける者同士さっ」
笑顔で小首を傾げるみくるちゃんにつられ、口元に笑みを浮かべながら控えめに頷く。
「やった! じゃあまた塾でね!」
「うん。またね」
「ごめんお待たせ!」
廊下で待っていた友達3人に振り返ったみくるちゃんの髪がさらりとなびく。
肩下10センチの黒髪はまっすぐで、艶があって、羨むのはいつものこと。
みくるちゃんの友達がわたしへ送る視線に胸の奥が委縮するのも、いつものことだった。



