あらかた課題を終わらせた19時頃、誰かに着信が入った。


「宿題ならやってねえぞ」


電話に出た瞬に一度目を遣ってから、テーブルの上を片付け、帰る準備をする。


「はあ? 今から? 断る。……、あとでやるんだよっ」

「相手、ハカセか京だね」

「うん、ゲームしてた自分にちょっと焦ってるね」


瞬は塾に通ってないからな。それはハカセも水島くんも同じだけど、瞬みたいにずぼらな人が自主勉強だけで成績をキープできるほど、うちの学院は甘くない……と、思う。


なんだかんだ要領がいいんだろうな。つくづく羨ましい。


「おい2分待て。――万代。お前帰んの?」

「えーっ。課題終わったんだから一緒にご飯食べようよ」

「あ、でもわたし、夕飯作らなきゃいけないから」


それにふたりは気にしないかもしれないけど、やっぱりカップルの中に長時間お邪魔するのはね……申し訳ない。


「そういやさっきおばさん帰ってきてたっぽいな」

「なにその聴力の良さ」


みくるちゃんの言う通り、わたしにも聞こえなかった。


でもそっか……今日も、帰ってきてるのか。


「まあいい。親戚にめっちゃミカンもらったから、持って帰って消費しろ」

「わ。ミカン今年初だ。ありがとう」

「――あ? 俺も食いたい? その辺で買え!」

「じゃあね万代! また明日~」


ばいばい、とみくるちゃんに手を振り返す。部屋を出る間際、目が合った瞬には微笑んでおいた。