「ごめんなさい……」
それ以外なにも言えず、逃げるように自室へ入りベッドに腰掛けた。
わたし今、どんな表情をしてるんだろう。
お母さんの目に映る、わたしは――…。
両手で顔を覆い、めまぐるしく変わる感情を抑え込む。
見たくなかった。
お母さんの目に映るわたしは、わたしにもっとも近く、もっとも遠くなりたい自分だから。
わたしだって、好きじゃない。
『大嫌い』と『イライラする』と言われて、じゃあ仕方ない……って。打開策を講ずる前に諦めてしまう自分に、苛立つことだってある。
どうしてもっとうまくできないんだろう、って。
どうしてこんな風になっちゃったんだろう、って。
……こうやってまた、薄汚れていくのかな。
形にできない宝物。
言われて嬉しい、言の葉種。
取り出せないから思い返すのに、弱虫に湧く蛆が、食い散らかすように宝箱まで這っていく。
ごろんとベッドに寝転がり、白いだけの天井を見つめた。
「いいなあ。天窓」
こうしているだけで自分の部屋から星が見える。それってどんな気持ちなんだろう。
嬉しいことがあったら。悲しいことがあったら。水島くんは、その日見た星空を忘れずにいたりするのかな。いつか見た輝きを、明日もどこかで重ねて見ているのかな。
脳裏に浮かぶプラネタリウムの星の輝きが、呼び起こされた火傷の鈍痛が、今だけは切なさを連れてくる。
ほんの少しでいい。
一掬の自信が持てたのなら、わたしは今度こそ自分から、守りたいものに手を伸ばせる気がする。



