「それにしても、こぎゃんところにプラネタリウムなんてあったんじゃなー。知らんかった」
「プラネタリウムに行こうって思わなかったの?」
「全く見えないわけじゃなかけん、思いつかんかった」
「……でもやっぱり、肉眼で見えるほうが嬉しい?」
「そんなことなか! 来てよかった」
――連れてきてくれてありがとう、万代。
あんまり物柔らかに言うから、赤くなった顔を横に振ることしかできなかった。
わたしがご褒美をもらっちゃったような気分……。
「実家の自室に、天窓があるけん」
文化総合センターを出るとふいに水島くんが空を仰ぐ。わたしは足を止め、それにならう。
雨は、上がっていた。
「ちょうどベッドの真上。そっから毎日、朝も夜も空が見えちょって。それをぼんやり眺めるんが好きだったけん」
「へえ……起きたらすぐ、今日の天気がわかるね」
「でも夏とか日差しがまぶしかよ」
「ふふっ。じゃあ夜は、天然プラネタリウムだ」
「……それ、俺も言っちょったなぁ」
――懐かしい。
言わずとも、水島くんの顔が語っていた。
微笑んでいるのに伏せられる瞳。ここにはないものを探すように。だけど見つけられないことを知っているように。それでも瞑ることをしない水島くんの瞳は、ひたすらに愁いを帯びて、わたしのいちばん奥を締め付けた。



