「そうなると考えられるのは、『復讐』ではないでしょうか？」

　よせばいいのに、八木は話を続けた。

「復讐、ね。でもただの頭のおかしい女かもしれないわよ」

「いえ、それは違うと思います」

「どうして？」
不思議そうに女は首をかしげた。

「それは・・・」少し躊躇するように言いよどんだ後、八木は覚悟を決めたかのように息を吸い込むと続けた。
「ガイドさんを撃つ時だけは、涙を浮かべていました。そして『あなたには関係がないのに』ともおっしゃっておられました。これは、ガイドさんを撃つことがご自身のシナリオにはなかった『突発的な出来事』だったからではないでしょうか」
そこまで一気に言うと、八木は口をつむんだ。言い過ぎた、とでも思ったのだろうか、座席にすばやく腰掛けた。

　女は目を細めると、
「ほう・・・」
と静かにつぶやく。