他の車両ではすでに運転手がいるところもいて、エンジンをかけたり窓を拭いているが、佳織の運転手はまだ現れなかった。

 自分の立つ位置を確認して、あらためて車内を見渡す。

 このバスは会社が所有する中型バスの中でも上のランクのもので、60席の椅子はどれもリクライニング対応になっており、通信カラオケやら大型液晶テレビまでが天井から降りてくる仕様になっている。一番奥にはトイレまであるから、中型とはいえ何時間乗っていても快適に過ごせるはずだ。

 佳織は、手元にある資料を眺める。

「私立なんだ。どうりで豪華なツアーなわけだ」

 今回、佳織が担当する学校は北海道は札幌市にある私立の高校で、3年生は5クラスあり、その3年5組がこれに乗車するらしい。彼らは昨日名古屋空港に到着し、市内観光をした後、これから向かうホテルで1泊している。