病室に足を踏み入れると、すぐに鳥岡は目を覚ましたようだった。

「あぁ、八木君」
青い顔して微笑む鳥岡を見たとたん、潤は視界がぼやけるのを感じた。こらえようとしても、鼻が熱くなり嗚咽がこみあげた。

「先生・・・」

「・・・聞いたのね。ごめんね、ごめんね」
なぜか微笑んで鳥岡は繰り返した。人は本当の悲しみに包まれたとき、やさしく笑うのだろうか。

「植園です、お休み中にすみません」
植園が声をかけ、吉沢が軽く会釈をした。

「いいえ、こうして寝ていても退屈なだけですから。刑事さんたちには何度も足を運んでいただき申し訳なく思います。もう生徒たちは家に戻れたのですか?」

「はい。本日許可が出ました。学校の再開の目処はたっていませんが、家でゆっくり休んでいただければと思います」
植園も静かに答えた。

「そう・・・よかった・・・」
安心したような深い息。

 潤は鳥岡に近づくと、
「先生は大丈夫ですか?傷は痛みますか?」
と尋ねた。