「なるほど」
山本は満足そうに大きくうなずいた。

「うまくできないかもしれませんが、本当にすみません」

「大丈夫。しかし、今時の私立はヒルトンに泊まるんやなぁ。不況なんて関係ないんやろうな」
山本が唇をとがらせて言う。

「そうですね・・・」
そう答えながらも、佳織は岐阜へ向かいながらのガイド内容を復習することで頭がいっぱいだった。あと30分もすれば彼らが乗り込んでくるのだから、緊張もピークに達してきている。

「大丈夫」

「え?」
言われた意味が分からずに、佳織が顔をあげる。

「そんな緊張せんでも大丈夫やで。学生なんてガイドが美人ならそれで満足。あとは勝手に騒いでるだけ。そういう生き物や」

 その言い方に思わずふき出す。

 山本のような明るい運転手に言われると、大丈夫な気がしてくる。