周りの生徒は、ここまでの現状に思考が追いついていないのか呆然としているようだった。すすり泣きの声も聞こえない。遠いと思っていた『死』が近くにあるのだから無理もない。

 中沢麻紀子も他にもれず、静かに自分の膝あたりを眺めていた。

___さっき感じた違和感は何なのだろう

 考えては見るが、霧をつかむかのように何も思いつかない。

 さっきからいやに山本と目が合う気がするが、気のせいかもしれない。

「藤原亮って男の子はどこにいるの?」
女が急に声を出した。

 麻紀子は通路を挟んで左側を見た。青ざめた顔を浮かべた藤原亮がそこにいた。

「どこにいるの?手を挙げなさい」

「なっ・・・俺だけじゃないですよ!」
藤原亮が席から立ち上がりながら声を荒げた。