中沢は思った。確かに、犯人たちは自分たちの素性を明かしすぎている。

「もしくは」
小声で八木が続ける。
「復讐さえ果たせば、罪をつぐなうつもりがあるのか。もっと言えば、復讐が終われば自殺するつもりかもしれない」

 中沢は犯人たちを見た。ふたりは何やらこちらに聞こえないように話をしている。

「皆殺しか自首か、自殺ってことね。皆殺しじゃなければ生き残るチャンスはあるわけよね」

「まぁそう言えるね」

 中沢は、自分自身がここまで『生きる』ことに執着していたのかと思い知らされていた。普段、毎日がかったるくて楽しみさえなかった日々が今では輝いて感じられる。学校での授業も恋愛も親の小言も、こんなに愛しく思える。

 そのためにも、今は目立たず生き残ることが大切だと本能が告げている。