見上げた空は真っ青で



その青に吸い込まれそうになったぼくは



あわてて深呼吸をした



足元に広がる緑の大地が



ざわざわと音を立てて



風を運ぶ



スニーカーを包むくらい伸びた草は



春のそれより少しかたくて



ぼくの足首がちくちくした



土のにおい



草のにおい



花のにおい



太陽のにおい



風はぼくにいろんなにおいを届けてくれて



ぼくの体をいろんな思い出で



いっぱいにした



ぼくの洋服を揺らす風



ぼくの頬をなでる風



ぼくの髪をふわりとさせて



風はどこへ帰るのだろう



見えない風を



目で追いかけた



丘をあがったその先で



黄色い衣装をまとった銀杏の木が



きらきらと音を立てて



風と仲良く戯れていた



重いバッグを担ぎなおして



ぼくはまた歩き始める



よいしょ



と言った声が



やけに大きく聞こえた



ぼくも帰ろう



丘を越えて



吹き抜ける風の行くほうへ



Home Sweet Home