* 珱平 *

くそっ…!!

ダンッ

俺は苦い思いを、壁にぶつけた。

…俺は珀に少しの別れを告げてからというもの、上手くいかないことばかりだった。

練習でのミス。
指揮とのリズムも合わず…俺の奏でたいものが見つからなくなってしまっていた。

まさに…スランプ。

何をするにも…失敗、失敗、失敗。

むしゃくしゃするばかりだった。

コンコンッ

「…はい」

「珱平…話しがある」

部屋に入って来たのは、俺の親父。

楠 斗音(クスノキ トオン)

有名なピアニストで、幼い頃から様々なコンクールで賞を勝ち取ってきた…天性の才能の持ち主。
すげぇ尊敬してるけど、絶対抜けねぇ…とも思うくらい…デカすぎる壁。

「お前、五年間、俺について来い」

「…は?」

突然で、俺には何が何だか…わからなかった。