「ところで、貴方のお名前は…?」

「えっ…さっき…言いましたよ?楠 珱平です。海山田音大四年です」

「よっ四年生ですか?!」

「みっ見えませんかね…」

「あっ…いえ、でも…楠さんと言えば…音大でトップを誇る三人の一人では…」

「ははっ、そんな大袈裟な…俺はその三人の中で一番ダメですから」

いや、絶対違う。
この人が一番だ。
ダメではなく、一番優秀。
そんな人を加害者にしてしまうなんて…

「すいません…私のせいで…楠さんの未来が…危うくなってしまうかも…」

「俺のことは、気にしないで下さい。貴女の未来の方が、心配です。俺は、怪我もしてないし…貴女には…大変な怪我を負わせてしまった…」

苦虫を潰したような顔をする楠さんに、心が痛んだ。