「こんな事故、気にしないで、貴方は貴方の道をしっかり歩んで下さい。お願いします…」

ゆっくりと、私は彼の頬に手をそえた。
彼は、その手に、震えながら自分の手を重ねた。

「すいませ…ん…本当に…貴女が生きていてくれて、良かった。俺は…そうでないと、自らの命を絶つつもりでした…」

「え…」

彼は、涙を次から次へと流した。

「被害者は貴女なのに、俺の方が、被害者ぶってて…最悪だ…最低です…」

気持ちが伝わってくる。
彼は、後悔しきれないくらい後悔している。
私ごときをはねたことに。

こんなに謝ってくれる人からは…私は何もする気が起きなかった。

叩く気も、怒鳴る気も。
何もかもが、浄化された気がした。