初恋の向こう側


「好きだ」



それは、たった三文字の言葉。

初めて口にした告白が、俺自身の中で浸透していく。


「ずっと好きだった。好きだよ。誰にも渡したくないし何処へも行かせたくない。気づくのが遅くて遠まわりもしたけど、もう迷わない。

 ヒロが、好きなんだ」


シーンと静まり返る部屋の中に二人っきり。背中を向けたままのヒロ。

草むらから虫の鳴き声が聞こえてくる。


── 好きだ。

それだけじゃ足りない。

言うだけじゃ、全てを告げるのは無理なことのように思えた。

言葉より重く想いが溢れそうになる。


「それだけ?」

「え」

「ありふれた言葉を並べただけじゃ届かないよ」


見えなくても、どんな顔をしてるかはわかる。

きっと頬を膨らませて強気な目をしてるだろう。


「ヒロ ─」


目の前の細い肩を掴んで、ちょっと強引に振り向かせた。