どんな表情をすればいいのかも、テンションさえも、分からなくて。
ただひたすらに、表情筋が、動くまま。
月の瞳を、見つめていた。
─…もし、蒼井よりも大切なものがあるとしたら、それは、月。
失いたくないから、
傷付けたくないから
水晶体の奥にある想いを、見逃さないように。
「いや!ほんと一瞬だったし!」
そう言って笑いながら手を動かす月に、彼女にも忘れない人がいると聴いた。
─…一瞬だった
その言葉の裏に、どんな想いが潜んでいるのかは、月しか、分からないから。
笑顔の反対側で
もう一度、ごめんと唱えた。
だけどもっと。
もっともっとずっと。
比べ物にならないほど鋭利なナイフで、
あたしは月の心を、ズタズタに、切り裂いていたんだ。



