私がちょっとどこかに寄ると言うだけでめちゃくちゃな要求をぶつけてくるんだから。別に一緒に来てくれなんて言ってないっていうのに!
ふん! とそっぽを向くと、いつものごとく顔を捕まれてぐるりと振り向かせられる。
首が折れるんじゃないかというくらいに。手加減知らないなこいつ。
「いったい! クソが! 痛いっつーの!」
「俺様が一緒に行ってやってもいいって言ってるんだけど……?」
期待の反応をしなかったからなんでいつも切れるんだこいつ。毎回毎回楽しませてくれるとでも思ってるのか。
しかも恩着せがましく言いやがって! 誰も頼んでないよ! 楽しませたくなんかもないし!
っていうか……顔が近いんだってば! なんだお前は!
「いーかーなーくーて、いいんだってば!」
負けるか。
毎回毎回負けてたまるか。なんだかんだ結局いつも負けてることだって自覚してるんだ! ちくしょう!
近い顔にも怒った顔にももうびびらないぞ!
私の言葉にむすっとして、いやそんな言い方じゃかわいいか。イラッとした顔をして「ふーん」と小さく呟く。
……次はなにするつもりだ。ぐぎぎ。負けねえ。私は戦う女の子なんだ!
一瞬ひるみそうになった気持ちを抑え込んでキッと新庄を睨み付けてから、新庄を見下すようにちょっと顎を上げる。
「なに? 行きたいの? 一緒に行きたいの? ならそう言えばいいのに……ほら、さっさと澄様に頼んでみたら?」
ふふん、とえらそうに新庄に告げると、新庄は無言で私を見つめる。
……な、なんですか!
そして……ちゅっと耳元に微かに音が届く。
「——……!」
ぎゃあああああああああ!



