狂愛ゴング




「おい、早くしろよ、のろまブタ」

「うっさいな! あんたが早すぎるのよ。なに? せっかち? 小さい男ね本当に」


授業が終わる度に教室にやってきて文句を投げかける、そんな新庄にも慣れ始めた。

毎回毎回よくもまあこんなにも暴言が口から出てくるもんだと感心さえしてしまう。あんたの頭には文句しかないの? 毎日楽しく過ごせばいいのに。


「思ったよりお似合いになってきたじゃない」

「冗談じゃない」


にやにやする泰子に文句だけを言って新庄の元に走った。

もっと文句を言って泰子に謝らせたいところではあるけれど、さっさと行かないとまたうるさい。

こないだとろとろ準備をしたら鞄で思い切り殴られたからな。女に暴力ふるうなんて最低な男だ。


「今日はなに? どこ行くの」

「別に。どっか行きたいならお前が決めろ」


あんたと行きたい所なんか無いわよ。


かれこれ……付き合って1ヶ月が経つ。

思ったよりもあっという間に、これといった変化もなく、私たちはまだ一緒にいる。

これと言って恋人らしいことをしているわけでもない。ただ一緒に帰るくらい。

たまに途中で寄り道をすることはある。ファーストフードで軽くご飯を食べたり、買い物したり。

ただ、筆記用具を買いに文具屋に行ったときは、油性ペンで顔に落書きされた。

映画を見に行った時はジュースを零されて、大声でケンカしたっけ。他にも……ああ、思い出したくない。

学校で話をすることも殆どないし。お昼を一緒に食べたのも、キス、をしたのだって一度切りだ。

メールや電話なんかとんでもない。
っていうか連絡先も知らないし。