狂愛ゴング


「なに黙ってんの。気持ち悪い」


き、気持ち悪いってなんですか。
ちょっと落ち込んでいるだけじゃない。

ムッとしつつ、顔に出さないように無視をする。

こんな男になに話してもバカにされるだけだ。普段ならともかく、今は結構真面目に悩んでいるっていうのに。


「お前、ほんっと、脳みそスポンジなんじゃねえのってくらい、バカだよな」

「……すいませんねスポンジで」


お前の脳みそは腐敗してるくせに。
舌打ち混じりに答えると、新庄は一瞥してなにもなかったかのように歩き出した。

今日は新庄の嫌味にも付き合う余裕がない。

ああ、私はいつもこうだ。
今更な状況になってからぐるぐる悩んで後悔する。だれか私のこの無鉄砲な脳みそと体をどうにかしてくれないもんだろうか。

吐き出しても尽きないため息をまた落として、ぼんやりと歩き続ける。


「ねえ、……どこ行くの」


隣を歩きながらなにも言わずにひたすら歩く新庄に声を掛けた。

いつもの道のりとちがうんですけど。このままついていっていいの? 勝手にどっか行ってもいいなら行くけど?

どこでもいいけどどこか分からないまま歩くのはしんどいんですけどー。

私の呼びかけに、新庄は足をとめて振り返り、じっと顔を見つめてくる。

な、なんですか。
数日一緒にいても、新庄の無言の視線には慣れない。っつか、怖い。なにを言われるのだろうかと身構えてしまう。

よし、ブタとデブとカスくらいなら今は言われても準備はできたぞ! よしこい!

心の準備をして新庄を見続ける。


「……ラブホ?」

「はあ!?」


なにバカ言ってるんですかね!? アホですか!? アホですね!?
なんでそんなことさらっと言えるんだこいつ!

なんでいつも私の予想と全く違うことを口にするんだよ! 私の心の準備を返せ!