狂愛ゴング


彼女の涙に一気に頭に上った血がすーっと引いて行って、逆に青ざめたかも知れないと思う程、おろおろとうろたえる。

いや、だってまさか泣くなんて思ってなかったし!

逆になんか『このやろ!』とかって食いかかってくるかと思っていたんだけど! っていうかどの言葉が彼女のスイッチを押してしまったのかも正直よくわかんないんですけど。


「み、道江!? 大丈夫!?」


彼女の涙に気づいた窓際の友達が駆け寄ってきて声を掛ける。
道江と呼ばれた目の前の女の子は、涙を拭いうつむくだけでなにも言わない。


「あんた! 道江になにしたのよ!」

「え? えーっと……」


その子道江ちゃんって言うんですね。
いや、そんなことどうでもいいんだよ。

なんで泣いているのか。私がなにをしたのか。私も聞きたいんですけど。

私の発言のせいだとは思うけれど、なにが引き金になったのかが分からない。お前らも話聞いてただろうが。どこがいけなかったのか私に教えてくれませんかね。


「黙ってないでなんか言いなさいよ!」

「いや、え? あ、ごめん?」


ぐわっと目の前に寄ってきて私を責め立てる。その勢いに負けてとりあえずごめんと口にするけれど、最後に疑問符がついてしまった。

だってよくわかんないし。


「ふざけないでよ!」


当然納得のいかない様子のボディーガードのうちのひとりに、ドン、と突き飛ばされる。

呆然としていたからだろう。そのままバランスを崩して尻餅をついた。


「……なに、すんの」

「あんたが悪いんでしょ! ほんとウワサ通りの乱暴者ね!」


泣いている道江ちゃんとやらにされるならともかく。

まわりで笑って居ただけのあんたらに突き飛ばされる覚えも、そんなふうに言われる筋合いもないわよ!

乱暴者だけどね! ええ、ウワサ通りの乱暴者ですけど!