狂愛ゴング


「誤解解けばいいんだよね」


そう返事をして、食べかけのお弁当にフタをして立ち上がった。
お弁当は食べてからにしたかったけど、こういう場合、あまり余裕を見せると逆効果だろう。

……要は新庄のせいなんだから、全ての矛先を新庄に向けちゃえばいい。


「澄にそんな器用なことが出来るとは思えないけどなあ……」

「私もやるときはやるわよ」

「……学習能力がないよね、澄は」


失礼な。

苦笑を零す泰子に「だいじょーぶだいじょーぶ」と言って彼女の元に向かった。

だって私なにもしてないし。彼女に対して若干の苛立ちはあるけれど、彼女は本気で誤解をしてるだけだ。私が新庄を奪ったとかなんとか。

あいつには冗談じゃないほど迷惑を被っているから、彼女に渡しちゃえばいいじゃない。ほーら簡単! 私ってあったまいー。


「えーっと、どうも」


ドアに近づいて、彼女にとりあえずの挨拶を掛けた。
そんな私の言葉にも、彼女の強気な態度はひとつもかわらなかったけれど。

……っていうか。
なんで取り巻きの女の子がいるんでしょうか。

ひとりかと思ったのに、窓際の壁に女の子がふたり、私達の方をじーっと見つめている。絶対この子の味方だろ。“見てる”じゃなくて“睨んでいる”のほうが正しい。

ボーディガードですか? 金髪と茶色の髪の毛が、光に反射して眩しいんですけど。


「新庄くんにどうやって取り入ったの?」

「……あー」


ボディーガードふたりに気を取られていると、目の前の黒髪の女の子が低い声で言う。
この女の子がこの前泣いていた女の子と同一人物なんて本当に女の子ってわからないもんだ。

あの時の弱々しさはどこいった。
今は瓦10枚くらい余裕で割りそうな強さを感じる。