狂愛ゴング


「なんだかんだ仲いいね」

「そう見えてるのなら頭おかしくなってると思うから病院行ったほうがいいと思う」


どこが仲いいのか。
ただケンカしながら歩いているだけだ。我ながら飽きないな、と思うけれど。同時に新庄もよく飽きないなと思う。

どうにかならないもんだろうか。
とりあえずさっさとなんでもいいから別れないと、そろそろ私の頭が狂いそうなんだけど! 

いつまで私はあいつのブスカスデブの暴言に奥歯を噛まなきゃいけないんだ。奥歯なくなったらどうしてくれる!


「澄ー、呼んでるよ」


呼ぶ声が聞こえて振り返ると、ドア付近でご飯を食べていたクラスメイトが、廊下を指して私を見ていた。

……呼んでるって誰が?

ぐいっと背をそらして廊下が見えるように仰け反る。
っていうか、用があるならせめて見える位置にいてくれたらいいのに。

あらやだ、我慢のし過ぎで些細なことにイラついちゃう。


「あ」


そして、廊下にいた女の子に、言葉を失った。

視線を合わせて、ぺこりと頭を下げる髪の長い女の子。

……こないだの、女の子。
こないだ、新庄に振られ、泣かされ、そして私にブスだと叫んだ、女の子。

……なんの、用事だろう。いやな予感しかしないんですけど。頭下げてても彼女すっげー無表情なんですけど。どう考えても“教科書貸して”なんて内容ではないだろう。


「無視したら?」


私と同時にことを理解した泰子が、珍しく白けた顔をして呟いた。
泰子はこういう女の子のいざこざに関してはあまり興味が無いらしい。

無視できたらいいけれど……どっちにしてもことを荒げそうな気がしてしまう。多分彼女は誤解をしているんだろうしなあ。