「でもまーファーストキスとかいうの? くだらない宝物、奪っちゃったし、それはそれで楽しめたけど……。お前俺のこと大嫌いだろ?」
「よく知ってるね。あんなものキスにも入らないと思ってるくらいには嫌いね」
悔しいよ。
別に初めては大好きな人と! って夢見ていたわけでもないけれど、あんたみたいな腐った男に、楽しみのためだけにされた自分が悔しいね!
「別れてあげてもいいよ?」
「え!? まじで!?」
新庄の言葉に、間髪入れずに顔を上げた。
マジで!? いいの!? 別れて! 今すぐ別れて! 一発は殴らせて!
そしてそのままどっかいって視界から消え去って、記憶からも抹消する!
「土下座する?」
「……するか。お前がしろや」
にっこりと微笑みながらよくわからない言葉が聞こえてきた。
馬鹿か。誰がするか。
私の言葉に新庄は少し残念そうに少し考え込む。ろくなことは考えないだろうけれど……。
「じゃー『新庄さん、もう二度と暴言は吐きません、敬います、絡みません、すいませんでした』って言ったら……いいよ」
いくつだお前。
本当に高校生男子がこれ? 頭腐っているし悪いしもうどうしようもないな。
「これくらいで別れられるんだけど? どう? 俺も嫌い、お前も嫌い、一緒にいたくないんだろ?」
お前も嫌いなら自分から離れて行けよ……。
ぐっと下から睨みながら新庄をみると「ほら早く」とでも言いたげな視線を送る。
……でもこれで、こんなむかつくことから解放されるんだよね。
すっごい悔しいしそんなことしたくない。だけど……ぎゅっと目をつむると、相変わらず新庄の顔が浮かぶ。
視界いっぱいに広がる新庄の顔。私を見つめる瞳。
——……消えろ!



