ぎりっと自分の口の中を噛んだ。
むかつく。本当にむかつく。本当は微塵も思ってない癖に……ただ、私の悔しがる顔を見たいだけだって言うのに。
周りで新庄の返事に騒ぎ始める女の子たちにさえ苛立ちを感じた。
——なんで気付かないの。
こんなの嘘に決まっているのに。どこがどうなって私のことを好きだと思うわけ?
「私はあんたなんかだいっきらい」
「……つめてえなあーキスした仲だっていうのに。真っ赤な顔してパニックになって逃げる姿かわいかったなあー」
「むかつくからその顔やめてくんない? 腹が立つ。人のこと馬鹿にするのがそんなに楽しいの。冗談じゃないわよ! あんたとキスするくらいならゴキブリとキスした方がマシよ!」
なにを言っても、手応えがないっていうのはこんなにも、腹立たしいのか。
私の声に騒ぐのをやめてじっと私を見つめるクラスメイトの中で、新庄は私の言葉になにも反応することなく笑う。
まるで高見の見物でもしているかのように余裕の顔で。
「まあ確かに俺お前と関わりたくないし地面にめり込ませて二度と這い上がってこないようにしたんだけど……」
……結構めちゃくちゃ言いますね、お前も。
「楽しめるおもちゃだなあって思って」
腐ってる。
この男の脳みそ絶対腐ってる……。
あっけにとられる私に新庄が勝ち誇った様に私と目の高さを合わせるように少し腰を下げた。
キレイな顔が——また目の前に。
……なんだよ。



