「なにを企んでわざわざこんなの届けに来たのよ」
「別に? 彼女の忘れもん届けただけだろ」
「あんたがそんなことするわけないってわかってるし」
「さすが彼女、わかってんじゃん」
ケラケラと笑い出して、私を見下ろしてきた。
「キスされて悔しがっているお前の顔見に来たんだよ」
ぎゃー!!
口にするな! 口にするなバカ!
私が焦るのと同時に、クラス中に黄色い声が響き渡った。
あああああもう最悪だ。マジでもうやだ……お母さん助けて……。
なんでこんなピンポイントで私のいやがることをするんだこいつは!! ジュースを持ってきたのも、キスのことを広めるためだろう。
マジで、性格が悪い。しかもそんなことのためにはキスまでする鬼畜やろう。
ぎりぎりと真っ赤な顔で睨んでいると、新庄はにやりと笑う。
「なにその顔。そんなに悔しい?」
「……死ねばいいのにって思うくらいにはね」
「初めてのキスが俺で光栄だろ?」
……なーんで初めてだって決めつけられてるんだよ! 初めてだけど!
むぐぐぐ。なにも言えない自分が悔しい。悔しい。
……こんなやつとキスしたなんて! 口が腐る! 口から腐臭がする!
「新庄くんって、澄のこと……好きなの?」
好きなわけねえだろう! なんだその質問。
クラスの女の子の興味のある顔を新庄はじっと見つめて、そして——昨日と同じような顔をして笑う。
「ああ、好きだよ」
嘘つくな。クソが!



