狂愛ゴング


「新庄とキスしてたって!?」


ぎゃーす!

一斉にクラス中の視線が私に集まるのを感じた。視線に殺される!
っていうかついさっき墓場まで持って行こうと思った私の秘密を!


「な、なな……なんで……」

「きゃーマジで!? 澄やるじゃん! だから赤かったの!?」


隣の泰子は一気にテンションを上げて私をいやらしいめで見つめながら笑う。

絶対おもしろがってる……!


「あんな場所でキスしたらそりゃねえ……知ってた? あそこ、3階までは全く見えないけど4階では丸見えなんだよー? 嫌っていた割には仲よくやってるんじゃなーい」


そう笑う友達の言葉に、口をぱくぱくさせるしかできない。

ああもう最悪だ。
最低だ。
私の高校時代はここで終わりか。暗黒時代の始まりだ……・


「へー噂ってはえーなあ」


背後からのいやって程聞き覚えのある声に振り返ると同時にぎろりと睨んだ。

くそ新庄! なんでこんなところに!


「これ」

「え?」


むうっとした顔をしながら新庄が私の胸元に放り投げてきたものを受け取る。

私の大好きなオレンジジュースだ。デザートにしようと思っていたやつ。ああ、忘れてきたのか。

っていうかそれをわざわざ持ってきたの? どうした新庄! 明日日本に槍を降らす気か!


「あれだけ美味しいって言っておいて忘れてんなよバカじゃねえの」

「……あ、んたが……!」


平然とそんなことをいう新庄に、思わず“キスなんてするから”と口にしそうになって言葉に詰まる。

さすがに自分の口からは……言いにくい。

ぎりぎりと言葉にしたいのに言葉が出てこない苛立ちに睨むしか出来ないのが余計に苛立つ。

ぐぎぎぎぎぎ。