狂愛ゴング


廊下際に座っているクラスメイトの男の子が、新庄に話しかけている。余計なことしてるんじゃねえよお前!

眉間にしわを寄せ、多分今ならブスといわれても“ですよね—!”と笑って返すことができるくらいに不細工な顔をして新庄を見つめた。

どっかいけ。さっさとどっかいけ。

美味しいご飯も不味くなるじゃないか。


さっさと姿を消してくれることを願っているのに、新庄は不機嫌な顔をして、私を睨みつける。

……自分の教室にいるのになんで私が睨まれなくちゃいけないんだよっ!

ち、と小さく舌打ちをして、お弁当に視線を戻す。あんなのに付き合って貴重なお昼休みを削るわけにはいかない。


クラスメイトと窓越しに話を続ける新庄の声が聴こえるのが気に食わないけれども。


「そういやお前の彼女、今日誰かにブスって叫ばれてたぞ」

「誰でも叫びたくなるくらいだからな」


いやいやいや! おいお前ら!
ぐりん! と顔を回転させて新庄達の方を睨み付けた。

人のことネタにしやがって!

そんな私に、新庄はバカにした様に笑うだけで、まわりにいる男達も苦笑をもらしていた。

っていうか。
今まで新庄を避けてきたからか。新庄にこんなに男友達がいるとは思わなかった。このクラスでたまに誰かと話しているのを見たことはあるけれど。あんまり意識してなかったしな。

しかも、思った以上に普通に話をしている。

さっきのように冗談を言ったり、茶化してみたり。乱暴で傲慢で鬼畜なはずなのに……。

そういえば昨日もあいつのクラスに行ったとき、友達らしき人がいたっけ?

ただ、友達に対しても、新庄の様子はいつもと変わらない。特別笑顔を見せたり優しくしたり笑ったり、なんてこともない。口の悪さも平常運転だ。