狂愛ゴング


「……じゃ」

「ちょ、ちょっと! 100円! 100円でいいから!」


がっしりと服を掴んで新庄を見上げる。
いやもうすげえイヤなんですが。さすがにこの状況は助けてくれませんか!

振り向いた新庄は無表情。
……なんて冷たい顔なんだろうか……。ぞくりと背筋が凍る。


「俺から100円欲しいって?」

「……ちゃんと返すわよ……」

「100円くらいあげなくもねえよ?」


にやり、と笑みを零す新庄に、ますます背筋が凍る。
こいつ……。


「俺なんかに借りていいなら、貸してやるけど? お前の嫌いな俺に借りを作ってもいいなら。気の強いお前が? 俺に? どーーーっしてもっていうなら? 仕方なく貸そうか?」


……この男マジで脳みそ腐ってる。
ひくひくと引きつる顔で、「カシテクダサイ」と震える声で呟いた。

その言葉が満足だったのか、新庄は私の目を見て、ニッコリと微笑む。

いやな予感しかしないんですけど。


「イヤにきまってんだろバーカ」


ですよねー。


「じゃ、がんばれば?」と冷たい表情に変えて、新庄はスタスタと席に向かって歩いて行く。

私の掴んでいた手を、乱暴に払い、そしてパンパンと叩きながら。


「……お客さま……」

「お金がないからいりません! 結構です! すいませんね!」


はい、これ八つ当たりです。

恐る恐る声を掛けてきた店員さんに、けんか腰に叫んで店を後にする。