「私……やっぱりあんたのこと大っ嫌いだわ」
「お互い様だな。俺もお前みたいに変に勘のいい女は嫌いだからな」
なんでだろうね。
こんなにもカスな男に嫌われるのって結構屈辱的。
「そんっなに人のこと怒らせて泣かせて……なにが楽しいの?」
「俺のことで一喜一憂するから、面白いんだよ」
意味がわかんない。
この人本当に人なの? やっぱり宇宙人なんじゃないの?
眉間にしわを寄せながら、取りあえず私に出来る範囲で理解しようと頭をフル回転させたけれど全然わからないまま新庄を見つめた。
新庄はそんな私を気にする様子もなくあたりを見渡して勝手に歩き始める。
「ちょ……」
「いちいちうるっせーな」
振り向きもせずに歩く新庄の後ろ姿に小さく舌打ちをして、離れたままついていく。
この男、頭に虫でもわいているんじゃないの。
私も別に性格がいいなんてこれっぽっちも思ってないけれど、それでも無意味に人を傷つけたりしないし、したくない。
なんでこの人はこんなことが出来るんだろう。
なにも言わずにただ疑問だけを抱いて歩いていると、新庄はなにも言わずに勝手にファーストフード店に入っていく。
入口の自動ドアに私も続こうと思ったけれど、ふと足が止まる。
いつの間に駅を過ぎていたんだろう。そして私はなに真面目に新庄の後ろをついて歩いてるんだ。
このまま放って置いて帰ればいいんじゃないの……?
一緒にいればまたなにされるか分かったもんじゃないし、いらぬ噂を立てられるのも面倒だ。
なのに、足は、止まったまま動かない。
私だけが必死に、彼を拒否している。なのにこいつは文句を言いつつも私を真正面から受け止めて、避けもせず、自分の思うように行動している。
堂々とした新庄の背中が大きく見える。



