ハアハアと呼吸を乱し、私たちの前で止まった女の子は、いつのまにか泣き出してしまっていた。
涙をぽろぽろとこぼしている。それでも真っ直ぐに見つめる瞳は、キレイだった。
長い髪の毛も乱れてしまって、相当一生懸命に走ってきたんだろう……。けなげだなーこんな男相手に。私が代わりに付き合ってあげたい。
「なに?」
そんな彼女に向けて発せられた新庄の声は、低く、そして冷たかった。
……な、なんでそんな冷たい表情でそんなことを言えるの? この必死な女の子にたいして……。
驚いて新庄を見ると、見下すような視線を彼女に向けていて、背後には黒いオーラが見えた。
「……昨日までは一緒にいてくれたのに……なんで急に……。私まだ……新庄くんのことが……理由も分からないし、悪い所があったら直すから……!」
彼女には私なんか見えてないんだろうなあ。
新庄の方を向いて声を荒げて必死に伝える彼女に心が痛む。
例え好きで付き合っている関係ではないものの……彼女からしてみれば“他に彼女が出来た”ということなんだから……。
ホントは好きじゃないんですこんなやつ!
こいつも私を好きなわけじゃないんです!
そう教えてあげたい。そしてついでに別れたい。
「理由?」
はっと乾いた笑いが聞こえて耳を疑う。
「俺、俺のこと好きな女の子が大好きだけど……なんでも言うこと聞くのはいやなんだよなあ……」
……なんだそれ。
ぽっかーんとする。こんなにもあんたのことを好きだとか言ってくれる物好き他にいないかもしれないよ!? っていうかなに言ってるの? 意味わかんない! お前はどーしたいんだ!
「あと、お前の泣き顔……かわいくねーんだもん」
え? え? なんだそれ。
ちょっとよくわかんない。
コノヒトナニジンデスカー!?



